「今期は黒字です」税理士からそう説明されたのに、会社の通帳を見るとほとんどお金が増えていない。むしろ去年より預金残高が少なくなっている。
「利益が出ているはずなのに、そのお金はどこへ行ったのだろう?」このように感じたことがある経営者の方は少なくありません。
結論からいうと、会社の「利益」と「現金」は同じものではありません。売上が計上されてもまだ入金されていない場合があります。
在庫を購入すれば、現金が商品へ変わります。借入金を返済すれば、経費として計上されなくても現金は出ていきます。設備投資や税金の支払いでも現金は減ります。
そのため、「利益が出ているか」だけを見ていても、会社にお金が残らない理由は分かりません。大切なのは、会社のお金がどこへ移動しているのかを確認することです。
この記事では、大阪市中央区の上辻会計事務所が、中小企業で「黒字なのにお金が残らない」と感じる主な原因と、経営者が確認しておきたい数字について解説します。
黒字だから会社のお金が増えるとは限らない

まず理解しておきたいのが「利益」と「現金」の違いです。非常に単純化すると、利益は、売上 − 費用によって計算されます。一方で、会社の現金は、実際に入ってきたお金 − 実際に出ていったお金によって増減します。この2つにはズレがあります。
例えば、商品を100万円で販売したとします。会計上は売上100万円が計上されます。しかし、取引先からの入金が2か月後なのであれば、その時点では会社の銀行口座に100万円は入っていません。
逆に、借入金100万円を返済した場合。会社から100万円の現金は出ていきますが、借入金の元本返済そのものは損益計算書上の費用ではありません。このような違いがあるため、黒字なのに現金が増えないということが起こります。
「利益はどこへ行ったのか」を考える

「お金が消えた」と考えるより、「現金が何に変わったのか」を見ると会社の状態が分かりやすくなります。例えば、現金が売掛金になっている。現金が在庫になっている。現金が設備になっている。現金を使って借入金を減らしている。現金を税金として支払っている。というように、お金の行き先があります。
そのため、「利益は出ているのにお金がない」という会社では、損益計算書だけを見るのではなく、貸借対照表や資金繰りまで一緒に確認する必要があります。
黒字なのにお金が残らない5つの原因

原因1.売上は増えているが、売掛金も増えている
最初に確認したいのが売掛金です。売上が計上されても、取引先からまだ入金されていなければ会社の現金は増えません。例えば、
今月1,000万円を売り上げた。原価や人件費などを差し引き、300万円の利益が出た。しかし売上代金の入金は翌々月。という会社であれば、帳簿上は利益が出ていても、先に給与や仕入代金などを支払わなければならない場合があります。
【 売上が伸びている会社ほど資金繰りに注意 】
特に注意したいのが成長している会社です。
売上が、
3,000万円
↓
5,000万円
↓
8,000万円
と伸びていけば、一見すると経営状態はどんどん良くなっているように見えます。しかし、売上が増えれば売掛金も増えるケースがあります。仕入や外注費、人件費の支払いが先に発生し、売上代金の回収が後であれば、成長するほど運転資金が必要になります。
そのため、売上が伸びているのに資金繰りが苦しいということは十分に起こり得ます。経営者が確認したいのは売上だけではありません。売掛金が前年や数か月前と比較してどれくらい増えているのか。売上を請求してから実際に入金されるまで何日かかっているのか。長期間入金されていない売掛金がないか。こうした部分まで確認する必要があります。
原因2.在庫にお金が変わっている
次に確認したいのが在庫です。例えば500万円の商品を仕入れれば、会社の現金は500万円減ります。商品が売れずに会社へ残っていれば、その500万円は「消えた」のではなく、現金から在庫へ姿を変えた状態です。
適切な在庫は事業を運営するために必要です。一方で、売れる見込み以上に仕入れている。長期間動いていない商品がある。売上の伸び以上に在庫が増えている。という状態であれば、会社の資金が在庫として寝ている可能性があります。
【 在庫は前年と比較して見る 】
決算書を見るときは、現在の棚卸資産の金額だけではなく、前年と比較することをおすすめします。例えば、売上は前年とほぼ同じなのに、在庫が1,000万円から2,000万円に増えている。という場合、会社の資金が1,000万円多く在庫へ移っている可能性があります。利益だけでは見つけにくいポイントです。
原因3.借入金を返済している
「利益は出ているのに現金が増えない」という会社で非常に重要なのが借入金の返済です。例えば、年間利益が500万円。年間の借入金元本返済が700万円。だったとします。
単純化して考えれば、利益500万円以上の現金を借入金返済に使っているため、会社にお金が残りにくくなります。ここでポイントになるのが、借入金の元本返済は費用ではないということです。
銀行へ毎月50万円返済しているからといって、その50万円すべてが損益計算書の経費になるわけではありません。利息部分は費用になりますが、元本部分は貸借対照表の借入金が減る処理です。
つまり、損益計算書では利益が出ている。一方で実際の現金は借入金返済によって減っている。という状態が起こります。
【 「黒字額」と「年間返済額」を比べる 】
経営者の方には、「利益はいくらか」だけでなく、年間で借入金の元本をいくら返しているのかも確認していただきたいところです。返済負担が大きい場合は、金融機関との借入条件や今後の資金計画について検討する必要が出てくることもあります。
原因4.設備投資をしている
車両。機械。パソコン。店舗設備。事務所内装。システム。会社が成長するためにはさまざまな設備投資が必要になります。例えば、500万円の設備を現金で購入すれば、当然会社の現金は500万円減ります。
一方で、一定の固定資産は購入した年に500万円全額を費用として計上するのではなく、耐用年数等に応じて減価償却していきます。そのため、現金は500万円減っているのに、損益計算書では500万円の費用になっていないということがあります。
これも、黒字と現金残高が一致しない理由の一つです。設備投資そのものが悪いわけではありません。大切なのは、その設備投資によってどのくらい売上や利益が増えるのか。
購入後も十分な手元資金が残るのか。借入を利用した方がよいのか。まで含めて判断することです。
原因5.税金などの大きな支払いが発生している
利益が出れば、法人税等の納税も発生します。課税事業者であれば消費税の納付もあります。さらに会社によっては、「賞与」「社会保険料」「保険」「修繕」「税金」「設備代金」など、大きな支払いが特定の月に集中することがあります。
そのため、「年間では黒字」でも、「ある月だけ急激に預金が減る」ということがあります。ここで重要なのは、支払いが発生してから資金を考えるのでは遅いという点です。
今後3か月、6か月の入金と支払いを予測し、どの時点で現金が減るのかを事前に把握しておくことが大切です。
あなたの会社のお金はどこへ行った?まず確認したい5項目

「黒字なのにお金がない」と感じた場合は、次の順番で確認してみてください。
1.売掛金
前年や半年前と比較して大きく増えていませんか。増えている場合、利益の一部がまだ現金化されていない可能性があります。
2.在庫
売上以上のペースで増えていませんか。増えていれば、現金が在庫へ変わっている可能性があります。
3.借入金
前年より大きく減っていませんか。借入金が減っているということは、その分だけ会社から返済資金が出ているということです。
4.固定資産
車両や設備、内装などが増えていませんか。設備投資へ現金が使われている可能性があります。
5.現預金
最終的にいくら残っていますか。そしてその金額は、毎月必要となる固定費と比べて十分でしょうか。
損益計算書だけでは「お金が残らない理由」は分からない

会社の数字を見るとき、多くの経営者が最初に確認するのは損益計算書です。もちろん損益計算書は重要です。しかし、損益計算書だけでは会社の状態を十分に把握できないことがあります。上辻会計事務所では、会社を見るときに次の3つの視点が重要だと考えています。
損益計算書
会社が儲かっているのかを見る資料です。売上や原価、経費、利益などを確認します。
貸借対照表
稼いだお金が何に変わったのかを見るための重要な資料です。現預金、売掛金、在庫、固定資産、借入金などを確認できます。
資金繰り
これから会社のお金が足りるのかを見るものです。現在の残高だけではなく、今後予定される入金・支払いを含めて考えます。
この3つを一緒に見ることで、「利益が出ているのに、なぜ会社のお金が増えていないのか」が見えてきます。
財務デューデリジェンスの視点から見ても「利益」だけでは会社は分からない

上辻会計事務所では、通常の税務会計顧問だけでなく、財務デューデリジェンスにも対応しています。財務デューデリジェンスでは、対象企業について、
・収益性
・コスト構造
・キャッシュフロー
・資産
・負債
・財務上のリスク
などを確認します。なぜここまで見るのか。それは、会社の良し悪しは、単年度の利益だけでは判断できないからです。例えば同じ500万円の利益が出ている2社でも、A社は現預金が増え、借入金も減っている。B社は売掛金と在庫が大きく増え、現預金が減っている。
という状態であれば、財務の内容はまったく異なります。これはM&Aや事業承継のときだけの話ではありません。日常の会社経営でも同じです。利益の数字だけを見るのではなく、その利益が会社の財務状態をどう変えたのかまで確認することが大切です。
社長が最低限見ておきたい5つの数字

難しい財務分析を毎月社長自身が行う必要はありません。まずは次の5つを定期的に見るだけでも、会社の状態はかなり分かりやすくなります。
1.現預金
会社にいくら現金があるのか。
2.売掛金
まだ回収できていない売上がいくらあるのか。
3.在庫
会社のお金がどれだけ在庫になっているのか。
4.借入金と年間返済額
借入残高だけでなく、毎年いくらの現金を返済へ使っているのか。
5.毎月の固定費
仮に売上が止まった場合でも、毎月いくらのお金が必要になるのか。これらを定期的に確認すると、「売上は伸びているが売掛金も増えている」「利益以上の借入返済をしている」「在庫が増えて資金が寝ている」といったことに早く気付けます。
会社にお金を残すために考えたいこと

原因が分かれば、次に対策を考えます。
入金までの期間を確認する
取引先との条件によっては難しい場合もありますが、請求から入金までの期間が必要以上に長くなっていないか確認します。請求漏れや回収遅延がないかもチェックします。
在庫を適正化する
長期間動いていない商品や、過剰な仕入がないか確認します。
借入返済と利益のバランスを見る
現在の利益に対して返済負担が重くなっていないか確認します。必要に応じて、資金調達や金融機関との相談を早い段階から検討します。
大きな設備投資の前に資金計画を作る
「現金があるから買える」だけで判断せず、購入後の資金繰りまで確認します。
納税額を事前に予測する
決算直前に税額を知るのではなく、利益予測とあわせて納税資金を準備します。
月次決算で早く変化に気付く
年に1回の決算だけでは、「いつから資金繰りが悪くなったのか」が分かりにくくなります。毎月数字を見ることで、問題が大きくなる前に気付ける可能性が高まります。
「節税すれば会社にお金が残る」とは限らない

黒字になると、「税金を払うくらいなら何かに使おう」と考えることがあります。しかし、先ほど説明したように、税金を減らすことと、会社に現金を残すことは、必ずしも同じではありません。節税目的で大きな支出をすれば、税金は減っても会社の預金も減ります。
そのため、税金がいくら減るかだけではなく、その対策をした後に会社へいくら現金が残るかまで考えることが重要です。特に、
今後採用を増やす。設備投資をする。新店舗を出す。新規事業を始める。といった予定がある会社では、手元資金を確保しておくことも重要な経営判断です。
資金繰りは「お金がなくなってから」考えるものではない
資金繰りについて相談されるタイミングとして、「来月の支払いが厳しい」「急いで融資を受けたい」という段階になっていることがあります。もちろん、そのような状況から対応を検討することもあります。しかし、本来はもっと早い段階から考えておく方が選択肢は増えます。
現在1,000万円の預金があるとしても、3か月後に300万円。6か月後に100万円。となることが事前に分かっていれば、その間にさまざまな対応を検討できます。上辻会計事務所では、税務顧問業務の一環として資金計画シミュレーションを行っています。
また、事業計画に応じた金融機関の選定や融資獲得のサポートにも対応しています。「お金が足りなくなってから借りる」のではなく、今後の資金状況を予測し、必要であれば早めに選択肢を考える。これが資金繰りでは重要です。
税理士から「黒字です」と言われるだけで終わっていませんか

決算のときに税理士から、「今年は500万円の黒字です」「税金は○○万円です」と説明を受ける。もちろん、これらも重要な情報です。しかし、経営者として本当に知りたいのは、それだけではないはずです。
なぜ利益が出ているのに預金が増えていないのか。来年はお金が増えるのか。この資金状態で社員を一人採用しても大丈夫なのか。1,000万円の設備投資をしても大丈夫なのか。今の借入返済ペースで問題ないのか。追加融資を受けるべきなのか。こうしたことを考えるために会計の数字があります。
上辻会計事務所では、単なる税務処理だけではなく、月次決算や資金計画、融資支援などを通じて、数字を経営判断へつなげることを大切にしています。
現在の税理士から決算書を受け取っているものの、「数字の説明がほとんどない」「資金繰りについて相談したことがない」「経営について話す機会がない」と感じている場合は、一度現在の顧問契約について考えてみてもよいかもしれません。
黒字なのにお金が残らない場合は「お金の行き先」を確認する
黒字なのに会社にお金が残らない場合、「もっと利益を出さなければ」と考える前に、一度会社のお金の流れを確認してみてください。
売掛金が増えているのか。在庫が増えているのか。借入金を返済しているのか。設備投資をしているのか。
税金などの支払いが大きいのか。原因が違えば、取るべき対策も変わります。
・利益を見る。
・貸借対照表を見る。
・資金繰りを見る。
この3つをセットで考えることが重要です。
大阪で会社の数字・資金繰りについて相談したい経営者の方へ
上辻会計事務所では、30年以上にわたる税務・会計分野での経験を活かし、税務会計だけでなく、資金繰り改善、事業融資、経営アドバイス、財務デューデリジェンスなど幅広い支援を行っています。
月次決算によって会社の状況を定期的に確認し、必要に応じて資金計画シミュレーションや金融機関への融資相談もサポートしています。
「利益は出ているのに会社にお金が残らない」「会社のお金がどこへ行っているのか分からない」
「借入を増やしてよいのか分からない」「設備投資や採用をしても大丈夫なのか相談したい」「決算書を経営にどう使えばよいのか分からない」
このようなお悩みがございましたら、大阪市中央区の上辻会計事務所までお気軽にご相談ください。決算書を作って終わるのではなく、その数字から会社の現状を把握し、次の経営判断につなげていくことが大切です。
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