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2026.10.11

会社に現金はいくら残しておくべき?中小企業の手元資金の目安

税務情報
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「会社には、いくら現金を残しておけばいいのでしょうか?」中小企業の経営者の方から、よくいただくご相談の一つです。会社の預金口座に1,000万円あれば十分なのか。2,000万円あっても、借入金は返済せずに残しておいた方がいいのか。

利益が出ているのであれば、設備や採用にもっと投資してもいいのか。会社を経営していると、「利益をいくら出すか」と同じくらい、「現金をいくら残すか」という判断が重要になります。

特に注意したいのは、黒字であることと、会社に現金があることは同じではないという点です。決算書では利益が出ていても、売掛金の回収が遅かったり、借入金の返済が多かったり、税金や設備投資などの支払いが重なったりすれば、会社の現金は減っていきます。

反対に、十分な現金があるように見えても、そのすべてを自由に使えるとは限りません。数か月後には法人税や消費税の納税があるかもしれません。賞与や設備更新を予定している会社もあるでしょう。

そのため、会社に必要な現金を考えるときは、「今、銀行口座にいくらあるか」だけではなく、「これから何にいくら必要になるのか」まで見ることが重要です。

この記事では、中小企業が会社にどの程度の現金を残しておくべきなのか、手元資金の目安や資金繰りの考え方について解説していきます。

会社に残す現金は「3〜6か月分」が一つの目安

会社に残しておく現金について、まず一つの目安になるのが、毎月固定的に出ていく資金の3〜6か月分です。たとえば、給与や家賃、社会保険料、借入金返済などを含め、会社から毎月500万円程度のお金が出ているとします。

3か月分であれば1,500万円、6か月分であれば3,000万円です。ただし、「3か月分あるから安心」「6か月分なければ危険」と単純に判断できるものではありません。

会社によって、売上の安定性や粗利益率、入金までの期間、固定費、借入金、納税額、設備投資の予定などは大きく異なります。そのため、本当に重要なのは「何か月分あるか」そのものではなく、自社はいくらを下回ると経営の自由度が低くなるのかを把握しておくことです。

月商ではなく「毎月いくら出ていくか」で考える

会社に必要な手元資金について、「月商の3か月分程度」という考え方を聞いたことがある方も多いかもしれません。もちろん、月商を基準にする方法もあります。ただ、実際には月商だけで必要な現金を判断することはできません。

たとえば、同じ月商1,000万円の会社でも、毎月の支出が450万円の会社と850万円の会社では、必要な現金は大きく違います。さらに、一方は毎月安定して売上が発生する事業で、もう一方は数か月に一度、大型案件が入る事業であれば、資金繰りの安定性も異なります。

そのため、まず確認していただきたいのが、「売上が一時的に止まったとしても、毎月いくら会社から出ていくのか」という数字です。給与、社会保険料、家賃、通信費、システム利用料、リース料、借入金返済など、毎月発生する支払いを洗い出してみましょう。

たとえば、毎月の支出が400万円であれば、3か月分で1,200万円、6か月分で2,400万円です。ただし、実際にはここに仕入や外注費、税金、大型投資なども加わります。単純に「販管費の3か月分」で終わらせず、実際に会社から出ていくお金全体を見ることが大切です。

「最低現預金」と「使える現金」を分けて考える

会社の預金口座に2,000万円あったとしても、その2,000万円をすべて自由に使えるわけではありません。まず考えたいのが、会社を守るための最低現預金です。売上が一時的に落ちても、給与や家賃、仕入先への支払い、借入金返済などを続けられる資金です。

たとえば、毎月400万円の支払いがあり、最低でも3か月分を確保しておきたいのであれば、1,200万円程度が一つの基準になります。さらに、近い将来に支払うことが決まっているお金も差し引いて考える必要があります。

法人税や消費税、賞与、設備投資、採用費用、大型仕入などです。たとえば、銀行口座に2,000万円あっても、3か月以内に税金300万円、賞与200万円、設備投資300万円を予定しているのであれば、800万円はすでに使い道が決まっています。

最低現預金が1,200万円であれば、この時点で実質的な余裕資金はほとんどないことになります。反対に、最低現預金と予定支出を確保したうえで資金が残るのであれば、その部分について採用、広告、新規事業、設備投資、借入返済などを検討できます。

会社の現金は、「あるかないか」ではなく、「守るためのお金」と「使えるお金」を分けて考えることが重要です。

利益が出ていても現金が減る理由

手元資金を考えるうえで、経営者の方に理解していただきたいのが、「利益」と「現金」は別のものだということです。「黒字なのに、なぜか会社にお金が残らない」このような状態は決して珍しくありません。

代表的な原因の一つが、売掛金です。たとえば1,000万円の売上が発生しても、実際の入金が2か月後であれば、売上を計上した時点では会社に現金は入ってきません。

一方で、給与や外注費、仕入代金、家賃などは先に支払う必要があります。特に売上が急成長している会社では、売掛金も同時に増え、「売上は伸びているのに現金が足りない」という状態になることがあります。

もう一つ大きいのが、借入金の返済です。借入金の元本返済は、原則として損益計算書上の経費にはなりません。そのため、利益は出ていても、返済によって現金が減っていきます。

たとえば年間1,000万円の利益が出ていても、税金300万円、借入金返済400万円、設備投資300万円、売掛金の増加200万円があれば、現金は200万円減る計算になります。

だからこそ、会社経営では「いくら利益が出たか」だけではなく、「最終的に現金がいくら増えたのか、減ったのか」まで確認する必要があります。

税金・節税も「最終的にいくら残るか」で考える

資金繰りを考える際には、税引前利益だけを見て判断しないことも重要です。たとえば決算3か月前の時点で、「今年は1,500万円程度利益が出そうです」と分かったとします。

しかし、経営者の方が本当に知りたいのは、それだけではないはずです。法人税はいくらになるのか。消費税はいくら支払うのか。借入金をどれくらい返済するのか。そのうえで、会社にいくら現金が残るのか。ここまで把握して、初めて次の経営判断ができます。

特に消費税については、預金口座に現金があるからといって、それをすべて自由に使えるわけではありません。たとえば銀行口座に2,000万円あっても、数か月後に法人税300万円、消費税400万円を支払う予定であれば、その700万円は実質的には予定支出です。

また、「節税をすれば現金が残る」とも限りません。100万円の経費を使って税金が30万円減ったとしても、会社からは100万円の現金が出ていきます。その100万円が採用や広告、設備など、将来の利益につながる支出であれば意味があります。

一方で、「税金を払いたくないから使う」という理由だけで不要な経費を増やせば、税金と一緒に会社の現金まで減ってしまいます。上辻会計事務所では、単に「税金がいくらになるか」だけではなく、「納税や返済、投資まで含めて、最終的に会社にいくら現金が残るのか」という視点が重要だと考えています。

業種によって必要な現金は変わる

必要な手元資金は、会社の業種や事業構造によっても変わります。建設業や制作業、受託型ビジネスなど、仕事をしてから入金まで時間がかかる会社では、売掛金が増えやすく、運転資金を厚めに持つ必要があります。

4月に仕事を行い、5月に請求し、6月末に入金されるのであれば、それまでの給与や仕入代金、外注費などは会社が立て替える必要があります。卸売業、小売業、製造業など、在庫を持つ会社も同様です。商品を仕入れれば、その分だけ現金は先に出ていきます。商品は資産として残っていても、売れるまでは給与や税金の支払いには使えません。

また、人件費や家賃など固定費の高い会社では、売上が落ちた場合でも多くの支払いが残ります。反対に、毎月一定額の継続収入がある事業では、将来のキャッシュフローを比較的予測しやすくなります。つまり、同じ年商であっても、必要な手元資金は会社ごとに違います。

借入金は「早く返す」より手元資金とのバランスを見る

手元に現金があると、「借金はできるだけ早く返した方がいい」と考える経営者の方もいらっしゃいます。もちろん、借入には金利負担があります。しかし、会社経営では、返済したあとにどれだけ現金が残るのかも重要です。

たとえば預金2,000万円、借入金1,000万円の会社が借入金を一括返済すると、返済後は預金1,000万円、借入金0円になります。借金はなくなりますが、毎月400万円の支払いが必要な会社であれば、手元資金は2.5か月分しかありません。

大口取引先からの入金が遅れたり、売上が一時的に落ちたりすれば、資金繰りが急に厳しくなる可能性があります。借入金を減らすことと、会社の安全性を高めることは、必ずしも同じではありません。

また、融資についても、現金がなくなってから金融機関に相談するのではなく、半年後や1年後の資金需要を予測し、余裕があるうちから準備しておくことが大切です。

資金繰りは「今」ではなく「半年後」まで見る

会社の銀行口座に十分な現金があっても、それだけで安心とは言えません。資金繰りで重要なのは、現在の残高だけではなく、1か月後、3か月後、半年後にいくら現金が残るのかを把握することです。

たとえば現在2,000万円の現預金があっても、納税や借入返済、賞与、設備投資などによって、半年後には1,000万円を下回る可能性があります。

早い段階でその見通しが分かっていれば、支出の見直しや売掛金の回収、投資時期の調整、金融機関への相談など、複数の選択肢を持つことができます。反対に、現金が少なくなってから気付くと、取れる対応は限られてしまいます。

そのため、年に一度の決算だけではなく、月次で売上、利益、現預金、売掛金、借入返済、納税見込みなどを確認し、将来の資金繰りまで見ておくことが重要です。

会社に必要な現金を考える際には、

・毎月どれくらいのお金が出ていくのか

・最低何か月分の資金を確保するのか

・今後どのような納税や大型支出があるのか

・半年後に現金がいくら残るのか

といった点を整理してみてください。こうした視点を持つことで、「銀行口座にいくらあるか」ではなく、「会社が実際に使えるお金はいくらあるのか」が見えやすくなります。

会社に現金を残すことは「経営の選択肢」を残すこと

会社に残しておく現金は、毎月固定的に出ていく資金の3〜6か月分が一つの目安になります。ただし、必要な金額は会社によって異なります。毎月の支出、売上の入金サイクル、借入返済、納税予定、設備投資などを踏まえ、自社にとっての最低現預金を決めておくことが大切です。

そして、会社に現金を残す目的は、単に資金ショートを防ぐことだけではありません。十分な手元資金があれば、「人を採用する」「設備に投資する」「新しい事業を始める」「今は投資を控える」といった判断を、自社の意思で行いやすくなります。

一方で、現金が少なくなると、「やりたいかどうか」ではなく、「お金がないからできない」という理由で経営の選択肢が狭まってしまいます。会社に現金をいくら残すかという問題は、資金繰りだけではなく、経営の自由度をどこまで確保するかという問題でもあります。

「利益は出ているのに現金が増えない」「会社にいくら残しておけばいいのか分からない」「借入金を返すべきか、現金を残すべきか迷っている」「納税後にいくら会社へ残るのか把握できていない」このような場合には、決算書上の利益だけではなく、今後の資金繰りまで含めて会社の数字を整理してみることをおすすめします。

上辻会計事務所では、月次決算や決算前の納税予測、資金計画、融資支援などを通じて、大阪の中小企業経営者の皆さまが数字を経営判断に活用できるようサポートしています。

会社の手元資金や資金繰りについてお悩みの方は、お気軽にご相談ください。

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